授粉を助けるために、遺伝子的に授粉の相性が良い品種を栽培したり、花粉を運んでくれるマメコバチを飼育したり、めしべが傷みにくいように防風ネットを掛けたり、といくつもの対策を行います。
中でも成りにくい品種や、樹によって成りにくいものもあります。そんな樹に少しでも結実してもらうため、人工授粉を行います。人工授粉は、自園の花を摘み、そこから取り出した花粉を、成らせたい樹の花につける作業です。
この人工授粉にもいろいろな方法があります。毛羽たきのようなもので花粉を運ぶという方法が、最も簡単で意外と成功率は低くないそうです。私たちは、佐藤錦や南陽という品種の結実を促進するために、水門という品種の花を採取します。その花をフルイにかけて花粉が入っている葯(やく)という黄色い粒状の部分だけを取り出し、その後、低温で乾燥、さらに粉砕・精製した花粉を使います。花粉をつけたかどうかがわかりやすいように、石松子という紅い粉末を混合します。
天候の良い日に、1日掛けて花を摘み、フルイにかけると、本当にわずかな花粉が手元に残ります。昨日と本日、合計で310gの花粉を取ることができました。明日も続ける予定です。
なお、使用するフルイの装置、乾燥機などは、地元のJAが所有しており、誰でも利用することができます。
なかなか手間が掛かるのですが、よく考えられたシステムだと思います。
農家になる5年前には、こんな作業があるなんて、まったく知りませんでした。
脚立に登って花を摘みます
すっかり開いた水門の花、こんなにきれいに咲いた花は使いません。
開ききった花の雄しべは、既に葯が開いてしまっているためです。
実際に使うのは、このようにつぼみが膨らんだ程度のものです。